「都市」と「近くの農業・農村」を結ぶ柏たなか農園のブログ

人気者だったヤギくんを失う

投稿日:2021年5月22日 11:38 pm

 柏たなか農園の人気者だった雄ヤギのアオくんが先週亡くなりました。私にとっては単に愛玩動物を失ったというより、かけがえのない従業員を一人失ったような気持ちです。いつかくる別れとはいえ、農園の風景もすっかりさびしく感じられ、気持ちが落ち込んでいます。

 あっという間でした。亡くなる2日前は少し動きが鈍くなった程度でした。草を食べさせに移動してもついてきたのですが、翌日は小屋の近くで寝そべったまま動こうとせず、そのうちうめき声を漏らすようになりました。最後の日は土曜でしたが獣医の先生に連絡、診てもらうことにしていました。残念ながら先生の到着を待たずに逝ってしまいました。


 大人のヤギが死ぬと家畜保健衛生所という県の機関にすぐ連絡しなければならないと言われました。休日明けの月曜日に連絡したところ家畜保健衛生所の職員がすぐに農園まで来て、アオくんの遺体を載せて行ってくれました。その後、畑の隅で遺体にかぶせておいたワラコモを焼いてアオくんの冥福を祈りました。


ヒマさえあれば農園の草を食べ、時々胃の中のモノを口に戻してかみ直し(ヤギは反芻動物)をやっていたアオくん。近くの道路に犬の散歩をする人が見えるとじっと動かなくなり犬と人が見えなくなるまで警戒態勢を解かないほどの臆病モノ。瞳孔が横長で一見間抜けな印象を与え、それが見るモノに安心感を与えてくれました。だからアオくんはいつも農園の人気者。アオくんほど人に安心感を与えるような存在は考えられないと、いなくなって改めて思います。


 アオくんのいない農園はさびしい。いつもは朝、農園のゲートを開けるとアオくんが「何かいいことないかなー」というような顔をしてヤギ小屋からこちらを見ています。そこで美味しそうな草のある場所に連れて行き杭でつないでおきます。農園から引き上げるときは一人で小屋の前に立ってこちらを見ていました。そのアオくんの姿はもうどこにも見えません。今になってかけがえのない存在だったと分るのです。

 アオくんは9年前の20124月に農園にやってきました。同じ日に生まれた雄の兄弟で身体が大きい兄貴分の方をキイロくん、少し小さくてやせ形の方をアオくんと呼ぶことにしました。キイロくんは農園の主力作物であるもち麦を食べ過ぎて栄養過剰で早くに死んでしまいました。結果的には兄貴に意地悪されてもち麦を十分食べられなかったアオくんが生き延びました。そのアオくんもいなくなり、9年前の2頭は今はもう1頭もいません。いたずら盛りだった2頭のことを静かに思い出しています。
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